女性ホルモンの変化とおくすり

店頭に立ちよく質問を受けることについて、つどつど書き綴っていきます。

女性の体にとって女性ホルモンは排卵に携わり、妊娠や出産に関わる重要な働きを担っています。また丸みをおびた身体のラインや美肌、つややかな髪などの女性らしい外観を作っているのも女性ホルモンです。しかし、このような働きをする一方で女性ホルモンはストレスや月経周期によるホルモンバランスの崩れ、また加齢によるホルモン分泌量の減少により、体に思わぬ不調をもたらしてしまうこともあります。例えば閉経前後の女性の約2~3割に現れるという更年期障害の症状も、閉経前の女性の生理の直前に現れるむくみやイライラなどの症状も、30~40代の女性に出来やすい女性特有のシミ(肝斑)も原因は女性ホルモンバランスの変動という点では同じなのです。そこで今回は、そんなホルモンバランスの変動による体の不調と自分でできる手当て(セルフメディケーション)についてお話ししたいと思います。

更年期障害はなぜおこるの?

女性ホルモンは卵巣から出ています。更年期になると卵巣機能が低下して女性ホルモンの分泌が減少し、やがてストップします。女性ホルモンが減少していることを察知した脳は卵巣に「もっと女性ホルモンを出すように」と指令を送りますが卵巣は指令通りにホルモンを出すことができません。このような脳の指令と卵巣機能のアンバランスにより自律神経にも混乱をきたし、のぼせ・冷え・イライラ・頭痛・動悸・耳鳴り・しびれ感などの様々な不調を引き起こします。 これが更年期障害です。

また、過激なダイエットやストレスなどが原因で20代~30代の女性も卵巣機能が低下して若年性の更年期障害を患うことがあります。

更年期障害の対処法は?

病院に通って女性ホルモンを投与するという治療法もありますが、自分で手当てをしたいという方には漢方薬をお薦めします。漢方薬とは何種類もの生薬を調合した薬のことで、体質や症状の違いに応じることができるよう、調合されている生薬の種類がアレンジされています。

例えば、肩凝り・冷え・頭痛などの症状には血の廻りを良くする作用のある“芍薬”や“牡丹皮”、“桃仁”などが配合されている漢方薬がよく効き、のぼせ・イライラ・むくみが辛い方は“桂皮”が含まれている漢方薬が効果的です。

当帰芍薬散エキス:体力がなく、冷え性の人向け。冷えやめまい、耳鳴りや頭痛などの症状の人に。

うすきね血の道振薬:どちらかといえば虚弱体質の人向け。疲れやすく、イライラするなどの不安症状が強い人や、気分にムラが多い人に。

当帰養血精:更年期障害による頭痛、肩こり、貧血、腰痛、腹痛、めまい、のぼせ、耳鳴り、生理不順、生理痛、冷え症の改善に効果があります。

ラムールQ:体質に関係なく使えます。頭痛や生理痛など痛みの強い症状の方向き。疲労感や肩こり、イライラにも効果があります。

命の母A:体質に関係なく使えます。更年期障害の症状をやわらげるのを助けるビタミンも入っているので、総合的に効果を発揮します。

近年、漢方薬を治療に取り入れる医師も増えています。速効性はありませんが、続けて飲むことにより症状そのものよりも症状の原因となる体質を改善していく効果があり、体質に合うと2~3週間で効果が出始めると言われています。そして原材料が自然界に存在する植物ですから、副作用のリスクがとても小さいという点がお薦めする理由のひとつです。商品の説明とご自身の体質・症状を照らし合わせて選んでみてください。

またインターネットの口コミを参考にしたり薬剤師に相談するのも良いでしょう。それでも頭痛などの症状が辛い時には我慢しないで鎮痛剤などを併用しましょう。お薬を上手に使って快適に更年期を乗り切りたいものですね。

更年期は骨にも現れる?

エストロゲンは骨密度とも関わりが深く、更年期になってエストロゲンが減少すると骨密度が低下しやすくなってしまいます。骨が弱くなっても自覚症状はないため気づかない事が多いのですが、更年期の早い時期に骨密度の減少が始まると閉経後に骨粗鬆症と診断されるケースが増えることも知られています。

骨密度に対しては適度な運動、日光浴、カルシウムやビタミンDを摂ることが推奨されていますが、大豆に多く含まれるイソフラボンにも骨密度を防ぐ効果があります。イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと構造が似ており、摂取するとエストロゲンと同様の働きをするからです。 症状の緩和とともに、骨粗鬆症予防のためにも納豆や豆乳、きなこなど大豆食品を多めに摂るようこころがけましょう。サプリメントの活用も手軽にイソフラボンを摂取でき効果的です。イソフラボンは過剰摂取にも注意が必要ですので、商品の用量を守ってお飲み下さい。

生理と体の不調 <月経前症候群(PMS)>

生理の1~2週間前から体の不調を感じ、生理が始まるとまた別の症状が現れる、ひと月のうち3分の1はスッキリしない日が続く・・・という女性も多いのではないでしょうか?生理前と生理中では症状も違いますし原因も異なります。生理前に現れる腹痛・お腹や乳房の張り・むくみ・便秘・下痢・腰痛・イライラ・眠気等の様々な症状は、まさに女性ホルモンのイタズラです。

月経の周期はエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンでコントロールされていますが、排卵日前後と生理開始日前後でこの2種類のホルモン分泌量の優劣が激しく入れ替わってしまうのです。そのためホルモンバランスが著しく変動し、体も混乱して更年期障害と同じような症状が現れます。この症状を月経前症候群(PMS)と言います。メカニズムも症状も更年期障害と似ていますから、更年期障害に使われる漢方薬がよく効きます。

人によって体質や症状も様々ですから自分に合った漢方薬を見つけて飲んでみませんか?症状がある期間だけ飲むというよりは、更年期障害と同様に続けて飲み体質を改善していく必要があります。月経前症候群によく使われる漢方薬は桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、五苓散(ごれいさん)などです。

生理痛

生理中の症状で多いのは腹痛、腰痛、吐き気、下痢、便秘、頭痛などです。生理が始まると体内にプロスタグランジンという物質が増えます。プロスタグランジンは子宮内の血液を排出するため子宮を強く収縮させ下腹部痛を引き起こします。またプロスタグランジンは子宮だけでなく胃や腸も収縮させるため吐気や胃痛、下痢や便秘などの消化器の症状が現れることもあります。

痛みを抑えるためには鎮痛剤がよく効きます。鎮痛剤は原因物質であるプロスタグランジンが体内で作られるのを抑えて鎮痛効果を発揮します。頭痛や歯痛、筋肉痛なども原因物質は同じプロスタグランジンですので、同じ鎮痛剤でこれらの痛みに共通して効くのです。痛みに加えて下痢や軟便の症状があるという方には鎮痛剤に下腹部の過剰な緊張を抑える成分が配合されている生理痛専用薬をお薦めします。生理中の腰痛は骨盤内の血行を良くすることで緩和できますので半身浴で体を温めたり、温シップを貼るのも効果的です。

鎮痛剤は胃に負担をかけることがあるため、空腹時に飲むことは避けましょう。胃の弱い方は胃薬を一緒に飲むと胃への負担を軽減できます。食べ過ぎ飲み過ぎによる胃痛・腹痛や下痢、またストレスが原因の胃痛などはプロスタグランジンとは無関係のため鎮痛剤の効果はなく、返って悪化することもありますので注意が必要です。しかし、生理痛がひどい方や薬で改善されない方は子宮内膜症や子宮筋腫、子宮の奇形など器質的に問題がある場合がありますので早めに婦人科を受診しましょう。

肝斑

しみの中でも女性ホルモンが影響しているしみがあるのをご存じですか?それは、肝斑(かんぱん)です。肝斑は30〜40代の女性に多く発症する顔のしみで、特徴として額や口の周り、ほお骨に沿って左右対称にほぼ同じ形や大きさで、もやっと広がるしみが挙げられます。原因は完全には分かっていないのですが、妊娠・出産や更年期、またピルの服用によってしみが現れたり濃くなったりすることから、女性ホルモンの変動がメラニン色素を大量に作ってしまうことが大きな要因と言われています。

肝斑の治療

化粧品や飲み薬などがありますが、化粧品等によるお手入れと飲み薬を併用するとより効果的です。飲み薬では、「トラネキサム酸」・「ビタミンC」・「L-システイン」の3成分が特に有効とされています。トラネキサム酸はしみの原因であるメラニン色素を作るメラノサイトの活性を抑えます。ビタミンCは、メラニン自体の生成を抑えるだけでなく、すでにできてしまったメラニン色素を分解し、またコラーゲンの合成も促すので肌を若々しく保ってくれます。L-システインはアミノ酸のひとつで、ビタミンCと共にメラニン生成を強力に抑えてくれます。L-システインは皮膚の新陳代謝を促進する働きもあるのでメラニンの生成を抑えるだけでなく排出も促してくれるのです。

飲み薬は効果が出始めるまでに最低4~5週間はかかりますが、これらの薬は女性ホルモンに影響を与えることもなく、副作用もとても少ない薬ですので、気長に飲むことができます。しかし、一度に沢山飲んでもしみが早く消えるわけではありませんし、思わぬ不調を招いてしまう可能性もありますので決められた用量は守って飲んでくださいね。有効成分が配合された化粧品もありますので、外側と内側から肝斑を治していきましょう。

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